読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

tailwisdom's blog

tailwisdomのじゆうちょう

ラノベかラノベじゃないか微妙なラインの小説7選

 はてブを眺めていたら、ラノベも一般小説*1も読む、そんな僕の需要に応える素敵なエントリーを見つけた。

ライトノベル好きが違和感なく読める一般小説10選 - 補助線とタワシ

 上記エントリーでも指摘されているとおり、ライトノベル読者を一般小説へ誘導しようという動きはけっこう見られて、例えばメディアワークス文庫の創設*2だったり、ライトノベルレーベルから出版された作品の一般レーベルへの移動だったり、レーベル自体はライトノベルレーベルではないものの、装丁がライトノベルっぽい小説もある。わりかし境界は曖昧だ。
 硬派なイメージのハヤカワSFにも、最近は(?)ライトノベルレーベル出身*3の作家が多く存在している。

 ということで、僕も便乗して、ラノベと一般小説のどちらに分類するかちょっと悩む「微妙なライン」から僕が好きな作品を選んで紹介してみる。
 本当は上記エントリーに敬意を評して10作選ぼうと思ってたんだけれど、途中で力尽きちゃった。。。

コンセプト

・「ラノベっぽい一般小説」もしくは「一般小説っぽいラノベ」を取り上げる。
・取り上げた作家の別の作品にもできるだけ言及する。
・僕の好きな作家のファンを増やす(重要)

米澤穂信春期限定いちごタルト事件

 アニメ化した『氷菓』でお馴染みの米澤穂信から、〈小市民〉シリーズの第1巻。〈古典部〉シリーズ同様に高校生が主人公なのだけれど、氷菓よりも総じてダークな話が多く、また主人公とヒロインの性格も捻くれている。ただ、シリーズが進むに連れ、主人公とヒロインも成長していくため、最終的にはふたりとも良い奴になっているかもしれない。
 小動物的な見た目だけれど、性格と口が悪い、という本作のヒロインについては好みが分かれるだろうけれど、千反田えるよりも伊原摩耶花が好きな人*4はきっと楽しめると思う。

 米澤穂信の小説はどちらかと言うとドロドロした性格の登場人物が多く、むしろ〈古典部〉シリーズが例外的に明るいだけかもしれない。もっと後味の悪い話が読みたければ『ボトルネック』や『儚い羊たちの祝宴』を、謎解きが読みたいなら『追想五断章』や『犬はどこだ』や『インシテミル』を読んでみるといいと思う。ファンタジーに抵抗がないなら、『折れた竜骨』もおすすめだ。
 

野崎まど『[映]アムリタ』

 紹介する『アムリタ』はメディアワークス文庫だけれど、最近ハヤカワSFにも進出した期待の新人。
 不思議な作風の作家で、前半は突飛な設定とコミカルなキャラクター造形やセリフ回しでぐいぐい読ませ、後半にはばらまいた伏線を一気に回収してどんでん返しに次ぐどんでん返しで想像の斜め上の結論へと着地する。初めて読んだときは失礼ながら絶対に一発屋だと思ったのだけど、その後もコンスタンスに水準の高い作品を書き続けていて、新刊を読むたびに土下座して非礼を詫びている。 

 野崎まどの著作は基本的に1冊完結なのだけれど、『2』はそれまでの作品の集大成になっている。だから、メディアワークス文庫の既刊を読むときは、原則として発売順に読んだほうがいいと思う。また、『なにかのご縁』はそれまでとは毛色の違うハートフルーストーリーだった。
 ハヤカワSFの『know』と『ファンタジスタドール イブ』はメディアワークス文庫の作品に比べるとコメディ成分少なめ、SF成分多めになっているけれど、これまためちゃくちゃおもしろい。
 逆に、コメディ側に寄せすぎてひどいことになった*5のが電撃文庫の『野崎まど劇場』だ。これはかなり読む人を選びそうなので、買う前に5ページでいいから立ち読みすることをおすすめする。

綾辻行人『Another』

「Anotherなら死んでた」のフレーズでお馴染みの『Another』。僕はアニメじゃなくて実写映画の方を観たんだけれど、橋本愛が実に可愛かった。ただ、映画版は小説よりもかなりホラーというかスプラッタ寄りになっていたかなぁという印象。痛い描写苦手な人は注意。
 原作小説は、ラノベとミステリとホラーを足して2で割った*6感じの、独特の雰囲気の小説だった。ある程度はミステリィの文法に従って書かれているので、謎解きをしながら読むこともできる。

 作者はむしろ本格ミステリ作家として有名で、館シリーズと呼ばれる作品群を書いている。僕も『Another』のあと『十角館の殺人』を読んでみたのだけれど、解決編では思わず唸ってしまった。

野尻抱介『南極点のピアピア動画』

 初音ミクニコニコ技術部を題材としたSF。ニコ動を題材としていることからもわかるように、おおむね現在の技術水準に準拠していて、SFなんだけれど、「これ、もしかしたら数年以内に実現するんじゃね?」みたいなリアリティがあっておもしろい。また、ニコニコ技術部*7をモチーフにしているため、みんなでワイワイ凄いものを作り上げていくというライブ感というか一体感があるのもおもしろかった。
 作者の野尻抱介は、実際にニコニコ動画に投稿もしているので、気になったらそちらもチェックしてみよう。

 野尻抱介の著作、いまから手に入れるならハヤカワSF版になると思うけれど、クレギオンシリーズや『ふわふわの泉』、ロケットガールシリーズはもともと富士見ファンタジアから発売されたものなので、わりとラノベっぽい雰囲気も残っている。他方、『太陽の簒奪者』や『沈黙のフライバイ』はタイトルからしてガチSFで、内容もガチSFなのだけれど、文章自体は読みやすいのでSF初心者*8にもオススメだ。
 これでSFに興味を持ったら、クラークの『2001年宇宙の旅』とかに進んでもいいと思う。

田中芳樹銀河英雄伝説

 最近、宝塚にもなっててびっくりした。
 観に行こうかとも思ったのだけれど、ちょっと勇気が足りなかったね。。。

 スペースオペラの大長編。とにかく登場人物が多くて、しかもみんなキャラが立っている。セリフ回しも格好良くて、思わず引用したくなるフレーズが多い。
 僕は小学生から中学生にかけて、銀英伝(をはじめとする田中芳樹作品)に触れて育ってきたので、いまの性格の何割かは銀英伝の影響を受けている気がする。中学校の卒業文集かなんかで、尊敬する人に『ヤン・ウェンリー』と書いた*9くらいにははまっていた。

 銀英伝は正伝10巻、外伝4巻で完結しているけれど、田中芳樹のスペースオペラでは、『タイタニア*10』もおもしろかったし、スペースオペラではないけれど、『アルスラーン戦記*11』もおもしろかった。
 『創竜伝*12』や『薬師寺涼子の怪奇事件簿*13』は作者の政治思想が露骨に出ているのでちょっと読みづらいところもあるけれど、それが気にならないなら楽しめる。
 実は、富士見ファンタジア文庫でも書いたことがあって、そのシリーズのタイトルは『灼熱の竜騎兵(レッド・ホット・ドラグーン)*14』だ。

滝本竜彦ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

 『NHKにようこそ!』の方が有名かもしれないけれど、あえてデビュー作のこちらで。
 夜な夜なチェーンソー男と戦う美少女を援護する俺、というある時期の非モテ男子なら一度は想像するシチュエーション*15をふくらませた青春小説。
 非モテ男子高校生の鬱屈した精神と厨二病の妄想をベースにした物語なので、ピンポイントで特定の層の心に深々と突き刺さって離れない。リアリティのかけらもないチェーンソー男がリアルな高校生の生活リズムの中に織り込まれている独特の世界観もおもしろい。

 同作者の『NHKにようこそ!』は漫画化、アニメ化しているけれど、漫画と原作小説ではかなりストーリーが異なっていた気がするので、漫画版しか知らない場合は、原作小説を読んでみても良いと思う。
 また、小説とエッセイが融合したような作風の『超人計画』もおもしろかった。文庫版表紙を飾るのは、瀧本さんの脳内彼女だ。

壁井ユカコ『カスタム・チャイルド 罪と罰

 電撃文庫の「カスタム・チャイルド」とは別で、これはメディアワークス文庫
 遺伝子操作によって生まれてくる子供の容姿や能力を操作できてしまう時代が舞台の青春小説。かなりシリアスなストーリィで、ドロドロした人間の負の面みたいなものがたびたび出てくる。そのため、がんばってまっすぐに生きてる登場人物たちは逆に貴くみえて、逆境を顧みずに努力する姿はかっこいいなと思う。

 もうちょっとマイルドなお話が好みなら電撃文庫の『キーリ』を、シリアスな話が好みなら『NO CALL NO LIFE』や『イチゴミルク ビターデイズ』をオススメする。

以上!

 ということで、思いつくままにおすすめを挙げてみた。アニメ化した作品なども多くて、紹介されるまでもなく知ってたよ、という人が多いかもしれない。そうだったら申し訳ない。
 上で挙げなかった作家でも、乙一(GOTH)、辻村深月(冷たい校舎の時は止まる)、茅田砂胡デルフィニア戦記)、小野不由美屍鬼)、恩田陸(夜のピクニック)、森博嗣スカイ・クロラ)、奈須きのこ(DDD)、海原育人(ドラゴンキラーあります)、などなど、「微妙なライン」は意外と広大なので、おすすめがあったらコメントやブクマで紹介してもらえると嬉しいなぁ。

*1:ライトノベルじゃない小説を便宜的にこう読んでいます。

*2:新人賞や書いている作家など電撃文庫と共通の部分は多いけれど、レーベルの雰囲気としては電撃文庫よりも一般小説チックだ。

*3:現在もライトノベルレーベルで作品を書いている方を含む

*4:僕のことだ

*5:いちおう褒めてる

*6:3で割るよりは全体的に濃い目

*7:や、オープンソースハードウェア

*8:僕自身、SF初心者なのだけれど

*9:厨二病というよりは、歴史上の人物に憧れる感覚でヤン・ウェンリーに憧れていた気がする。どっちみち黒歴史だ。

*10:未完

*11:未完

*12:未完

*13:未完。でも続刊は比較的順調に出ている

*14:未完

*15:するよね? 僕は100回くらいした。